※このページではアフィリエイトプログラムを利用しています。

ロードバイクのジオメトリ表を見ると、XS、S、M、L、XLとフレームサイズが大きくなるにつれて、さまざまな数値が変化しています。
つまり、「単純に小さいサイズのフレームを拡大コピーして大きいサイズを作っている」というわけではありません。
異なる体格のライダーがそれぞれのサイズに乗ったときに、適切なライディングポジションやハンドリング、前後の車体バランスが得られるよう、サイズごとにジオメトリを調整しているのです。
メーカーの設計思想によってもちろん違いはありますが、一般的にはフレームサイズが大きくなると次のようにジオメトリが変わる傾向にあります。
このようなジオメトリの変化がロードバイクの乗り味・性格にどのような変化を与えるでしょうか?
ここではGIANT TCR SLR 1を例に上げて具体的に解説していきましょう。
サイズが大きくなるほど小さくする設計が多い
トレール量は、ロードバイクのハンドリングを考えるうえで重要な数値です。
一般的には、サイズアップに伴ってトレール量を小さくする方向の設計が見られます。
GIANT TCR SLR 1の場合です。
かなり大きな差があります。
なぜ小さくするのか?
トレールは、ヘッド角、フォークオフセット、タイヤ半径によって決まります。
一般的には、ヘッド角が立つほどトレールは小さくなるため、ヘッド角とセットで考える必要があります。
サイズが大きくなると、ホイールベースやフロントセンターも長くなり、車体は大型化します。
大型化すると、ハンドリングがよく言えば安定方向に、悪く言えばモッサリした感じになっていきます。
そこでヘッド角を立ててトレールを小さくし、サイズアップによってハンドリングが過度に穏やかになることを抑える方向に調整することがあります。
つまり、
サイズアップによる車体の大型化
↓
ハンドリングが安定方向へ変化
↓
ヘッド角を立てる
↓
トレールを小さくする
↓
操舵レスポンスを調整
という関係です。
サイズが大きくなるほど立てる設計がよく見られる
サイズアップに伴って、ヘッドアングルを大きくする=立てる設計はロードバイクでよく見られます。
TCR SLR 1では、
となっています。
ただし、この例ではM→MLでは73.5°→73.0°と少し寝ています。
これは結構珍しいと思います。
しかし、こういう例外はあるものの、サイズアップに伴ってヘッド角を立てる方向で調整する設計が多いです。
なぜ立てるのか?
サイズアップすると車体の前後方向が大きくなるため、車体は安定方向へ変化します。
そこでヘッド角を立てることで、トレールを減らし、操舵レスポンスをクイック側に調整するわけです。
「大きいライダーだからクイックなハンドリングが必要」
という意味ではありません。
サイズによって車体寸法が変わっても、各サイズでバラつきのない適切なハンドリング特性になるよう調節するという設計思想です。
サイズが大きくなるほどシートアングルを寝かせる傾向が明確
例えばTCR SLR 1では、
XS 74.5° → S 74.0° → M 73.5° → ML 73.0°
と、サイズアップするほどシートアングルが寝ています。
シート角を寝かせるというのは、BBに対してサドルをどのくらい後方に離す、ということです。
身長が高くなればなるほど、大腿骨も長くなります。
フレームサイズが大きいのにシート角が小さいサイズと同じだと、大腿骨の長さが長すぎて、サドルが前寄りになりすぎてしまいます。
そこでシートアングルを寝かせることで、大きなサイズでも適切なサドル位置を設定しやすくすることができます。
ただし、実際のサドル位置はシートアングルだけでなく、次のような要素も関係します。
サイズアップに伴って小さくする、つまりBB位置が高くなる設計が多い
TCR SLR 1では次のとおりです。
サイズが小さいほどライダーの体重も軽く、少しBB位置を下げることで重心を落とし、軽い体重でも車体に安定感が出るようにしているのです、
ただ、この微調整をあまり重要視せず、全サイズでBBドロップを一定にするメーカーもあるようです。
BBドロップが大きいとコーナーリング時にペダルが路面にヒットする可能性がでてきます。
また、BBドロップが小さいと連続するコーナーでの切り替えしが軽快になる傾向にあります。
サイズアップするとホイールベースは長くなる
これは比較的明確な傾向です。
TCR SLR 1でも、
986 → 986 → 990 → 1001 mm
とサイズアップに伴って長くなっています。
これは単純に大きな身体のライダーに合わせて、車体全体の寸法が大きくなった結果です。
サイズにかかわらずホイールベースが一定だと、大柄なライダーは相対的にかなり小さいサイズに乗ることになり、安定感がなくなります。
ホイールベースが長くなることで、一般には直進安定性も高まる方向になります。
ただし、メーカーはヘッド角やトレール、チェーンステーなども同時に調整するため、ホイールベースの増加だけでサイズ間の乗り味を判断することはできません。
サイズアップで長くなる
フロントセンターとは、BB中心からフロントハブ中心までの距離です。
サイズアップすると、基本的にはこれも長くなります。
フレームサイズが大きくなるのですから、まあ当たり前と言えば当たり前ですね。
特に重要なのは、リーチと密接に関係することです。
大きな身体のライダーは、ハンドル位置も前方へ移動させる必要があります。
そのため、
サイズアップ→ ヘッドチューブ位置が前方へ→ フロントセンターが長くなる
という関係になります。
さらに、
ホイールベース = フロントセンター + チェーンステー長
なので、チェーンステーを一定にしたままフロントセンターを長くすれば、ホイールベースも長くなります。
これはTCR SLR 1の設計にもよく表れています。
チェーンステーは全サイズ415mmで一定なのに対し、ホイールベースはサイズアップで長くなっています。
ここで、サイズにかかわらずチェーンステー長が一定なのは意外ですね?
その理由を次に説明いたします。
サイズアップしても一定にする設計が多い
ここは非常に興味深いポイントです。
TCR SLR 1では、XSからMLまで415mmで完全に一定です。
フロント三角側はサイズに応じて大きく変える一方、リア三角側は共通化する
という設計です。
なぜ?
チェーンステー長は、
など、乗り味に大きな影響を与える要素に関係します。
ここをサイズごとに変えると、でリア側のキャラクターが大きく変わってしまいます。
そこでチェーンステーを一定にして、サイズによるリア側の特性変化を抑えているのです。
すべてのロードバイクに当てはまるわけではありませんが、一定にしているモデルは多いです。
サイズアップで長くなる
リーチは、BBからヘッドチューブ上端までの水平方向の距離です。
これはサイズアップに伴って増えるのが基本です。
TCR SLR 1では、
376 → 383 → 388 → 393 mm
となっています。
身長が高いライダーほど一般的に、腕や胴が長く、ハンドル位置も適切に前方へ移動させる必要があります。
そのため、フレームのリーチを長くします。
ただし、リーチ=実際のハンドルまでの距離ではありません。
実際のサドルからハンドルまでの距離にはステム長やハンドルの形状も考慮に入れる必要があります。
完成車の場合は、そこも含めてリーチだけでなく、ステム長も決定しています。
サイズアップで高くなる
スタックとは、BB中心からヘッドチューブ上端までの垂直方向の距離です。
TCR SLR 1では、
518 → 529 → 546 → 563 mm
とサイズアップに伴って大きくなっています。
大きな身体のライダーほどサドル高も高くなるので、それとともにハンドル位置も小サイズよりも高くしなければなりません。
そこでスタックを高くして、体格に対して適切なハンドル高を設定しやすくしています。
サイズアップによって変化するが、方向はモデル次第
スタック/ リーチ比は、バイクによって方向性が変わり、興味深い要素です。
TCR SLR 1では、
となります。
つまりこのモデルでは、サイズアップするとスタック/ リーチ比が上昇する傾向があります。
公式値から計算できます。
これは、大きいサイズほど、リーチだけでなくスタックをより大きく増やしている
ことを意味します。
つまり、サイズが大きいほど上体が立ち気味のアップライトなポジションになりやすいということです。
反対にサイズアップによってスタック/ リーチ比が小さくなるバイクもあります。
この場合は、サイズが大きいほど、より上体が低い攻撃的なポジションにセットしやすいという設計です。
ここまでを見ると、メーカーがサイズ展開で何をしているのかが見えてきます。
ロードバイクのサイズ展開は、単純な「拡大コピー」ではありません。
典型的には、サイズアップによって
という基本的な大型化を行いながら、
といった補正を加えます。
その結果、大きな身体に適したポジションを確保しながら、ハンドリングやBB位置、サドル位置などがサイズによって極端に変化しないように調整するのです。
この「何を変えて、何を変えないのか」こそが、メーカーのサイズ設計における思想を読み解く手掛かりになります。
ジオメトリ分析からみるロードバイクの車種ごとの性格・乗り味の考察はこちら⇒中古ロードバイク